ロバート・アルトンの見えない功績

アグデス・デミル、ボブ・フォッシー、ジェローム・ロビンスなど、世にその存在を示し賞賛を受ける振付氏がいる一方で、あまり取り上げられる事もなく、はっきりした功績が評価されない人物がいる。ロバート・アルトンもそんな中の1人で、今やネット社会で検索すれば何でも情報が入る時代だが、ローバートの事は大雑把なプロフィールだけで、振付師としての詳しい情報や画像が極端に少ない。

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Robert Alton(1902~1957)は、ほとんどの振付師がそうであるように、ブロードウェイの舞台から振付師になり、「Anything Goes」「Du Barry Was A Lady」「Pal Joey」などのヒット作の振付を手がけ、やがてハリウッドに招かれて、MGMなどの大手の映画会社が作るミュージカル映画の振付に携わった。
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一般的にロバートの功績のひとつとして、それまでユニゾンを踊るだけのコーラスダンサーの振付に、ソロのセクションをフューチャーしたり、グループごとに見せ場を作るなどの構成を取り入れたと言われている。またバレエとタップに長けていたので、その両方が活かされているのも振付を見ると理解できる。

ジャック・コールやボブ・フォッシーが、その独特のボディーラングエージで個性を発揮しているのに反して、ロバートの振付には特別な特徴がないように見受けられるが、ペアダンスの振付などを見ていると、その巧みに気持ちよく流れるステージング、計算されたポジションの入れ替わりなどが見事で、それらがあまりにも自然に見えるので、ロバートが特別に評価されない理由ではないかと思う。しかし振付などをする人がみれば、それがいかに難しく、数々のアイディアとセンスの良さが際立っているか理解できると思う。

「イースターパレード」(1948)の中の有名なアン・ミラーの見せ場「Shaking The Blues Away」のナンバーもロバート・アルトンの振付とされている。当然アン・ミラーも振付に携わっていると思うのだが、どこまでがアルトンの振付で、どこがアンなのかの明確なところは推測するのみである。しかしロバートがいたことで、あの名作タップナンバーが仕上がったことは間違いない。

また同じ映画のフレッド・アステアとジュディー・ガーランドの「A Couple of Swells」やジーン・ケリーとジュディーの「踊る海賊」の中の[Be A Crown]のナンバーを見ると、歌に合わせた振りという程度で、振付とはみなされないかもしれないが、そこにもロバートのセンスが活かされているはずで、多くの人がこの名作ナンバーを覚えている影に彼の存在があるのだと思うと、ある意味「職業振付師」として徹していた一面も感じられる。統制の取れた躍動感があるアンサンブルの振付、個人の技量を最大に活かしたソロやデュオのナンバー、ダンスの技量がないスターの歌振りと、オールマイティーに才能を活用した名振付師、ロバート・アルトンの影の功績を意識しながら、映画に残されたそれらの作品をぜひご覧になってみてください。少しず彼のセンスが見えてくると思います。

参考映像リスト
この二つのデュオナンバーを見ると、ロバートの振付のひとつの特徴が見えてくる。

[The Best Things Happen While You’re Dancing] (White Christmas 1954)

[It’s a Lovely Day Today] (Call Me Madam 1953)

ダンスとタップの両方が際立っている振付の例
[Something to Dance About] (Call Me Madam 1953)

[Whewe Did You Learn To Dance] ( I Love Melvin 1953)

[Choreography] (White Christmas 1954)

[Abraham] (White Christmas 1954)

アン・ミラーの最高のタップナンバー
[Shaking The Blues Away] (Easter Parade 1948)

ミュージカルナンバーとして古典的になっているナンバー

[Be A Crown] (The Pirate 1948)

[A Couple of Swells] (Easter Parade 1948)

ロバート・アルトン本人がグレタ・ガルボの相手役で登場する場面
(Two-Faced Woman 1941)

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